律子焦燥

みなさん、こんにちは。
たいへんご無沙汰いたしておりましたが、
覚えていらっしゃいますでしょうか。

　「マトリョールの律子と申します。」

わたくし、キャディさん専属の伴奏者としてこちらに参りましてから
あと少しで半年になります。

その間、キャディさんのために、ただ１曲を、心をこめて伴奏してまいりました。

それなのに、
まさかわたくしの知らぬ間に
わたくしの立場を根底から揺るがすような計画が進んでいたとは･･･！

木枯らしの吹く寒い夜、
それはやってきたのでございます。

　「開けて！」

箱の中から、毛むくじゃらの物体が、瞳を光らせてこちらを見ているのでございます。
わたくしはもう怖くて怖くて…！

するとキャディさんが待ちかねたように現れたのでございます。

　「あら、来たわね、早かったじゃない！すぐ出して差し上げるわ！」

キャディさんはこともあろうに、はさみ、カッターナイフ、ドライバーを手にして、
箱を解体しはじめたのでございます。

なぜそんな用具が必要なのでしょう･･･！

まあ！

箱の中では、何か が、ワイヤーと結束バンドで固く固く拘束されているではありませんか！

わたくし、昔見た映画のジュラシックパークを思い出してしまいました。
そのワイヤーを切ったら、きっと、大変なことが起こってしまうに違いありませ･･･ああっ！


　ブチッ！ブチッ！　（キャディ子ワイヤーを切る）


　　・・ごろんっ　


　「パッコちゃんだよ――☆」




　
　　　・・え？　　パ？！
　　　これはいったい･･･？



　　　　　　　　　　　　　
「やったわ！とうとうわたしにも
専属バックバンド兼バックダンサーがついたのね・・！」



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【つづく】